当院ではASOの基本原理は踏襲しながら、より確実に、安全で、効果的な術式を追求してきました。“確実”というのは、術者の意図した通りの骨片を切除できる確率を高めることです。さまざま工夫を凝らしながら、術式の変遷を経て現在では2段階に分けて骨切りを行なうことにしています。
はじめに正貌での改善に関して、下顎体部を中心とした外板切除術をサジタール・ソーで行ないます。次に側貌での改善に関して、下顎角部曲線的全層切除術をコントラアングルドリル、オシレーティング・ソー、テシエ・オステオトームなどを用いて行なっています。従来より報告されてきた術式と比較し、当院での術式は術前デザイン通りに骨切りするのが容易であり、確実性、また効果においてはもっとも優れた術式です。
下顎角部(いわゆるエラ)の骨切り術を論じる場合、正貌、側貌での改善法を別々に論じる必要があります。なぜなら、この2つの改善手術は、厳密にいうと異なったアプローチが必要だからです。エラの改善を希望される患者さまの90%以上において“側貌での変化”よりは“正貌での変化”に希望の比重を置いています。
すなわち、多くの場合、顔面下1/3の横径を減少する手術が要求されますが、これは下顎角部(エラ)に限定した骨切り手術とは切り離して考える必要があります。
下顎のライン |
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診察の時、はじめに患者さまの希望を聞く際に、言葉だけではなく実際に鏡でイメージを確認します。
患者さま自身の指で頬部の輪郭希望ラインを示してもらいます。正貌における下顎部の側方最突出点を“正貌におけるエラ”と認識すべきです。これは患者さまの言う『エラ』であり、あくまで解剖学的にいう下顎角とは異なります。この両者の位置関係を3次元的に理解することが大変重要です。
すなわち正貌における横径減少手術として適応となるのは、下顎角部の骨切り手術ではなく、下顎体部を中心に下顎骨の厚みを減少させる手術(下顎骨外板切除術)ということになります。
一方、側貌においては、角部の位置、下方・後方への張り出し程度によって骨切りラインが決定されます。側貌でのデザイン決定の際にセファロ、3次元CTは重要な情報となります。具体的にいうと耳垂基部から下顎角部までの垂直距離により、角部における全層骨切りデザインの垂直高を決定します。
また、オトガイと下顎角の垂直方向における関係(mandibular plane angle), オトガイの形態も同時に検討し、前方への骨切りライン(水平長)を決定します。
通常は下顎角部に限局した骨切りを行うことはほとんどなく、ほぼ全例においてオトガイ結節付近まで骨切りあるいは骨削りを行ないます。なぜなら骨切り後の前方に残るラインの不整を修正するため、また前方における骨切り・骨削りは正貌における横径減少効果をもたらすからです。
1) 正貌での分類・適応
一般的にはホームベース型や四角型の輪郭を卵型に近づけたいとの希望が多く見られます。
但し、実際には“きれいな卵型の輪郭”であるにもかかわらず『さらにほっそりとした卵型にしたい』といった患者さまが美容外科に多いのも事実です。下顎(角)形成術を希望する患者さまの90%以上で、正貌における変化を希望しているため、多くの場合下顎骨外板切除術が適応となります。正貌における改善手術として術式を選択する際に注意すべき点は“理想の卵型”に近づけるために、デザイン的に下顎骨全体(オトガイを含む)を総合的に評価することです。
例えば、オトガイが大きい(wide chin)症例に対し、下顎ラインが細くなった場合には、かえってバランスが悪くなることがあります。このような症例では、オトガイまで含めた下顎形成を検討する必要があります。さらに下顎角が後下方に突出し、mandibular plane angleが小さいsquare faceの症例ではオトガイ形成術の併用が絶対的に必要となります。
正貌改善においては、下顎骨外板切除術に加えオトガイとのバランスを考慮し手術計画を立てます。
2) 側貌での分類・適応
下顎角部の相対的位置関係、突出方向・程度により分類します。
臨床的にはmandibular plane angle、耳垂基部から下顎角部までの垂直距離の2点が重要です。これらはセファロ側面像を分析して全層切除術の必要性、切除骨片の大きさ・形状などを検討します。臨床的に注意すべき点は、『エラをほっそりと削りたい』という患者さまの希望をそのまま受け入れ“角部全層骨切り術を適応する”といった短絡的な発想をしないことです。
前述のように、患者さまのいう『エラ』は決して解剖学的下顎角のことを言っているとは限らないからです。角部骨切り術の際に、過剰切除には注意が必要です。特に下顎枝上方に向かって、垂直方向に骨片を過剰切除した場合には、下顎角が喪失し、非常に不自然で奇異な形となります。下顎角、すなわちエラは元来生理的に存在するものであり、“目立たなくする”ことが手術の目的で、“なくす”ことではありません。
当院は下顎角部における骨切りはsmooth-curved angle ostectomyと称して、生理的で自然な“角・段差の少ない曲線的なエラ”を残すような骨切り法を行なっています。